投資銀行

外資系投資銀行部門(IBD)の仕事内容と年収

投資銀行部門(IBD)とは

投資銀行部門とは、投資銀行と呼ばれる業態の企業に含まれる部門の一つで、M&Aのアドバイザリー業務や資金調達支援などを専門に行う。英語ではInvestment Banking Divisionと訳し、IBDという略称で一般的に呼ばれる。

投資銀行とは証券会社の一種で、資金調達を必要とする企業(発行体)と投資家の双方をサポートすることで、資本市場を円滑に機能させることを目指す。代表的な投資銀行は以下の通り。

分類代表的な投資銀行
外資系投資銀行ゴールドマン・サックス
モルガン・スタンレー
J.P.モルガン
メリルリンチ(バンクオブアメリカ証券)
シティグループ
ドイツ銀行
UBS
バークレイズ
BNPパリバ
日系投資銀行野村證券
大和証券
SMBC日興証券
みずほ証券
三菱UFJモルガンスタンレー証券

投資銀行の中には投資銀行部門(IBD)以外にも様々な部門が存在する。以下に示しているのはいわゆる「フロント」と呼ばれて顧客に接する部門だが、その他にも裏方としてITやコンプラのサポートを行うミドル・バックの部署も存在する。

部門仕事内容
投資銀行部門(IBD)M&Aのアドバイザリー業務や資金調達支援
株式調査部門企業の調査と投資家への情報提供
セールス部門機関投資家への営業
トレーディング部門投資家のトレーディング(売買)のサポート
ウェルスマネジメント部門富裕層等の資産運用

なお、ゴールドマン・サックスの2019年度の決算を見ると、投資銀行部門の売上は全体の20.8%、営業利益では24.4%にとどまることが分かる。一番の収益の柱はグローバル・マーケッツという、一般的にはセールス&トレーディングと呼ばれる部門であることが分かる。

(10億USドル)部門売上高% 売上高部門営業利益% 営業利益
グローバルマーケッツ14.7840.4%3.8936.8%
アセットマネジメント8.9724.5%3.8736.6%
投資銀行部門7.6020.8%2.5824.4%
コンシューマー&
ウェルスマネジメント
5.2014.2%0.242.2%
合計36.55100.0%10.58100.0%

また、モルガン・スタンレーではさらに投資銀行部門の割合が少なく、全体の売上の13.7%に過ぎない。営業利益はセールス&トレーディングなどと合わせて開示されているため正確な数字は分からないが、部門ごとに各社の収益性に大きな違いは存在しないため、営業利益ベースでも全社の10~15%と考えられる。

(10億USドル)売上高% 全社売上高営業利益% 全社営業利益
ウェルスマネジメント17.7442.7%4.8342.7%
セールス&トレーディング13.7032.7%5.4948.6%
投資銀行部門5.7313.7%
投資その他0.962.3%
インベストメント・マネジメント3.769.0%0.998.7%
重複等-0.47-0.0%-0.01-0.0%
合計41.42100.0%11.30100.0%

M&AブティックやM&A仲介との違い

M&Aに関する業務を行う主体としては、ゴールドマン・サックスのような投資銀行の投資銀行部門(IBD)、M&Aブティック、M&A仲介会社、銀行系/コンサル系のM&A部隊の4種類が存在する。それぞれの特徴は以下の表にまとめている。

ファーム種類業務内容具体例
投資銀行・投資銀行部門(IBD)においてM&Aのアドバイザリー業務を行う(対象は大企業が中心)
・他にもトレーディング部門やアセットマネジメント部門などを抱え、資本市場に関連する幅広い業務を行う
・M&Aに伴う資金調達のサポートも行い、近年ではM&Aのフィーよりも重要な収益源になりつつある
ゴールドマン・サックス
モルガン・スタンレー
J.P.モルガン
野村證券
M&Aブティックファーム・M&Aアドバイザリーに特化している(対象は中堅企業を中心に大企業も含む)
・トレーディング等の他の部門/機能は持たない
・M&Aに伴う資金調達のサポートは出来ない
ラザード・フレール
エバ―コア
グリーンヒル
M&A仲介・M&Aにおいて売り手と買い手の双方のマッチングを行う(対象は中小・中堅企業)
・契約上はアドバイザリー契約ではなく紹介業にあたる
・成約時に売り手と買い手の双方から譲渡金額の数%にあたるフィーを受け取る
日本M&Aセンター
M&Aキャピタルパートナーズ
ストライク
銀行系/コンサルティング・ファーム・国内系銀行やコンサルティング・ファームが自社のメイン事業とのシナジーのためにM&A事業を行う
・投資銀行部門やM&Aブティックと同様にアドバイザリー業務を行う(対象は中小・中堅企業)
三菱UFJ銀行
三井住友銀行
デロイトトーマツ
アクセンチュア

投資銀行部門(IBD)の組織と仕事内容

投資銀行 オフィス イメージ

投資銀行部門は一般的にカバレッジチームとプロダクトチームに分かれる。カバレッジとは一言でいうと法人営業のことで、担当する企業と定期的に面談をしてニーズを聞き出したり、提案を行うことによってM&Aや資金調達の案件につなげる。プロダクトチームは、カバレッジチームが発掘してきた案件を実行する。

カバレッジチームは以下の表のように産業別に分かれており、それぞれ「GIG」「TMT」「FIG」などの略称で呼ばれる。チームの分け方は投資銀行によって少しずつ異なる。

カバレッジチーム小分類/対象企業
ジェネラル・インダストリー・グループ
(GIG)
コンシューマー
製造業
ヘルスケア
テレコム・メディア・テクノロジー
(TMT)
通信
メディア
テック
(ベンチャー含む)
フィナンシャル・インダストリー・グループ
(FIG)
銀行
保険
ノンバンク等
フィナンシャル・スポンサー・グループ
(FSG)
PEファンド
リアル・エステート・グループ
(REG)
不動産・REIT

プロダクトチームは以下の表のようにプロダクト(商品)別にチームが分かれており、カバレッジチームと共同で案件を行う。

例えば、カバレッジのGIGチームが発掘してきたM&Aの案件であれば、TMTとM&Aの両チームから数人ずつのチームで案件全体を執り行う。案件を獲得するまではTMTが主体となって動くが、実際に案件が始まると契約書やモデルを回す主体はM&Aチームになる。

プロダクトチーム扱うプロダクト
M&AM&A
ECM(Equity Capital Market)資金調達(エクイティ)
DCM(Debt Capital Market)資金調達(社債等)

M&Aアドバイザリーの仕事

投資銀行部門の中でも特に人気があるのがM&Aアドバイザリーである。大企業がM&Aを行う場合、売り手側と買い手側にそれぞれアドバイザーがつくことが一般的である。

中でも投資銀行部門は資本市場の観点からM&Aの案件全体を取りまとめるためフィナンシャル・アドバイザー(FA)と呼ばれる。案件全体を通じたFAの動き方は以下のようなプロセスに分解される。

プロセス仕事内容
ソーシングカバレッジチームがクライアント企業と対話を重ねてニーズを発掘する。
チームアップM&Aの案件がスタートすることが決まると、社内でプロダクトチームを加えた案件チームを組成し、加えて法律事務所やコンサルティング・ファームなどの外部のアドバイザーを起用する。
エグゼキューションチームが揃ったあとは、プロダクトチームを中心に案件執行のフェーズに移る。具体的には対象企業の価値やリスクを査定するデューデリジェンス(DD)や財務モデリング、契約書の作成などを行う。
クロージング各種のプロセスを経て最終的に交渉が終わるとM&Aの契約が締結される。その後は独占禁止法の通過など諸手続きを必要に応じてサポートし、M&Aの完了までを見届ける。

FAは基本的に案件の規模に応じた成功報酬を得るため、ビジネスとしては年に数回起こる大型の案件をしっかりとこなすことが非常に重要になる。2019年の日本企業に係る主要なM&A案件を以下にまとめている。

買い手買い手FA対象会社/
売り手
対象会社FA
三菱UFJフィナンシャルグループJ.P.モルガン
モルガン・スタンレー
バンクダナモン/
Temasek Holdings
UBS/
クレディスイス
日本ペイント野村證券DuluxGroupマッコーリー証券
ソフトバンクゴールドマン・サックス
みずほ証券
野村證券
ヤフー
(Zホールディングス)
モルガン・スタンレー
SMBC日興証券
東京センチュリーみずほ証券
モルガン・スタンレー
Aviation Capital Group LLC/
Pacific Life Insurance Co
ゴールドマン・サックス
アサヒグループ野村證券
ロスチャイルド
Cub Pty Ltd/
アンハイザー・ブッシュ・インベブ
ラザード
Zホールディングスみずほ証券ZOZOメリルリンチ
SMBC日興証券
Zホールディングスモルガン・スタンレーLINE/
NAVER
(経営統合)
メリルリンチ
J.P.モルガン/
ドイツ銀行
みずほ証券
野村證券
三菱ケミカルホールディングスJ.P.モルガン
モルガンスタンレー
田辺三菱製薬メリルリンチ
野村證券
中部電力
三菱商事
バークレイズ
メリルリンチ
Enecoシティグループ
昭和電工みずほ証券日立化成/
日立製作所
ゴールドマン・サックス/
メリルリンチ

投資銀行部門の役職と転職方法

投資銀行部門(IBD)では以下の表のとおり5つのタイトルが存在する。アナリスト・アソシエイトは平均すると3年程度で次のタイトルに昇進できるが、ヴァイスプレジデント以降は営業成績が重要になるため人により昇進の速度や可否が異なる。

実際には投資銀行ごとに少しずつ差があり、例えばゴールドマン・サックスではディレクターというタイトルが存在せず、ヴァイスプレジデント(VP)の期間が長く設定されている。

タイトル(役職)仕事内容
アナリストロジ周り、手を動かすこと全て
アソシエイト細かい案件実務のリード(現場リーダー)
ヴァイスプレジデント(VP)実行中の案件の指揮
新規案件獲得のための営業
ディレクター実行中の案件の指揮
新規案件獲得のための営業
マネージングディレクター
パートナー
実行中の案件の責任者
重要な交渉
新規案件獲得のための営業

投資銀行部門の採用は業界経験者と業界外によって大きく事情が異なる。まず、業界外からの転職ではほぼ全てのケースでアナリストからのスタートとなる。社会人経験の年数や仕事内容によってアナリスト何年目になるかが変わる。

業界未経験者の中途アナリスト枠は幅広い業種からエントリーが可能だが、内定を獲得しやすいのは同じ金融業界の証券(リテール等)やメガバンク、FASに加え、外資系の戦略コンサルティング・ファームや総合商社が多くなる。

また、MBAからの転職の場合は一般的にはアソシエイトからスタートすることになる。その場合、新卒入社組で鍛えられたアナリストを部下としてマネージする必要があり、仕事内容に早急にキャッチアップすることが求められる。

業界内での転職の場合、移籍元の投資銀行におけるタイトルをベースとして、個別の業務経験などを加味してタイトルが決まる。日系から外資系の場合、タイトルが下がること(ディスカウト)が一般的であり、日系投資銀行のアソシエイト3年目が外資系投資銀行のアナリストになることもある。

投資銀行部門(IBD)の年収

投資銀行部門(IBD)の年収はタイトルと年次によってある程度のレンジに収まる。日系と外資系では年収水準が大きく異なるため、ここでは外資系投資銀行の年収イメージをまとめている。なお、各社の方針や(転職組の場合)個々人の経験に応じて多少のズレが生じる。

タイトル基本給ボーナス
(% 基本給)
年収
(合計)
アナリスト900万円~
1200万円
50%~
70%
1350万円~
2040万円
アソシエイト1500万円~
1800万円
70%~
100%
2550万円~
3600万円
ヴァイスプレジデント2000万円~
2500万円
100%~
130%
4000万円~
5750万円
ディレクター2800万円~
3500万円
130%~
150%
6440万円~
8750万円
マネージングディレクター5000万円~営業成績次第営業成績次第

外資系投資銀行(IBD)の求人情報

対象企業外資系大手投資銀行
年収900万円~3000万円程度
勤務地東京
掲載元:Liiga

対象企業:外資系大手投資銀行
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(投資銀行業務未経験の方はアナリスト1年目から)

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・M&A及び企業戦略
・資本構成 / 財務リストラクチャリング
・資金調達
・民営化

必要スキル・経験:
①以下のいずれかのご経験、資格をお持ちの方
・外資系投資銀行、または日系証券会社でのM&A業務の実務経験をお持ちの方
・PEファームでの投資経験をお持ちの方
・財務アドバイザリーファームでのコーポレート・ファイナンス、バリエーション業務のご経験のある方
・戦略系コンサルティングファームでのコンサルティング経験のある方
・会計士資格をお持ちの方
・弁護士資格をお持ちの方
・中央官僚としてのご経験をお持ちの方
②対人スキルの高い方
③投資銀行業務に対して熱意をお持ちの方
④ビジネスレベルの英語力のある方